「登山にレインウェアはいらないのでは?」と感じていませんか!?
特に、気持ちの良い晴れの予報が出ている日には、かさばる装備はできるだけ減らしたいもので、レインウェアは不必要だと考えるかもしれません。
しかし、レインウェアを持たない、また安易にビニールカッパで済ませたり、持参したレインウェアのメンテナンスを怠っていたりすると、山の急な天候変化に対応できず、大きな失敗や後悔につながることがあります。
実は、レインウェアの本当の役割は雨を防ぐことだけではありません。
優れた防寒着としても機能し、登山の安全性を大きく左右するのです。
特に、快適さを保つための透湿性や、荷物を軽くするコンパクトさは重要な選択基準となります。
この記事では、登山の初心者の方にも分かりやすく、レインウェアの必要性から、あなたに合ったおすすめのレインウェアの選び方まで、詳しく解説していきます。
- レインウェアが登山に必須とされる本当の理由
- 状況に応じたレインウェアの具体的な選び方
- 安価な代替品が危険な訳と適切な装備
- 快適な登山を維持するための機能性とメンテナンス知識
「登山でレインウェアはいらない」は本当か?
- レインウェアが不必要だと思われてしまう理由
- 雨を防ぐだけではないレインウェアの役割
- 天気が晴れでもレインウェアは手放せない
- なぜビニールカッパでは代用できないのか
- 忘れがちなレインパンツは必要?
- 便利な防寒着として兼用できる一着
レインウェアが不必要だと思われてしまう理由

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登山装備を準備する中で、レインウェアを荷物から外したいと考える人は少なくありません。
その背景には、いくつかの共通した理由が存在します。
最も多いのは、「天気が良い日にしか登らない」という考え方です。
確かに、降水確率が0%の予報であれば、雨具の出番はないように思えます。
また、登山用レインウェアは比較的高価なものが多く、初心者が最初に揃える装備としては負担に感じられることも一因でしょう。
さらに、ザックの中でかさばり、重さも気になるため、少しでも荷物を軽くしたいという気持ちから、優先順位が低く見積もられがちです。
日帰りの低山ハイキングなど、行程が短い場合には、その傾向がより強まると考えられます。
これらの理由から、レインウェアは不要、あるいは他のもので代用できると思われてしまうのです。
天気が晴れでもレインウェアは手放せない

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「晴れの予報だからレインウェアは不要」という判断は、登山において最も危険な考え方の一つです。
平地と異なり、山の天気は非常に変わりやすく、短時間で急変することが日常的に起こり得ます。
その理由は、山の複雑な地形が雲の発生を促しやすいためです。
風が山の斜面にぶつかることで強制的に上昇気流が生まれ、急な雨や霧を発生させることがあります。
また、万が一の事態への備えという側面も無視できません。
例えば、道迷いや怪我によって下山が遅れ、予期せず山中で夜を迎える(ビバークする)状況を想像してみてください。
夜間は気温が大きく下がり、雨が降っていなくても夜露や結露で体は濡れていきます。
このような時にレインウェアを一枚羽織るだけで、風や湿気から体を守り、体温の消耗を大幅に抑えることが可能です。
過去の山岳遭難事例でも、防寒着の有無が生死を分けたケースは数多く報告されています。
これらのことから、たとえ完璧な晴れ予報であっても、レインウェアは常にザックに入れておくべき必須装備と言えます。
雨を防ぐだけではないレインウェアの役割

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レインウェアの最も重要な役割は、雨による体の濡れを防ぐこと以上に、「体温の低下を防ぐこと」にあります。
山岳環境では、体が濡れること自体よりも、濡れた状態で体温が奪われ続けることが低体温症につながり、命に関わる事態を引き起こしかねません。
このため、登山用レインウェアには主に3つの機能が備わっています。
- 防水性: 外からの雨や水の侵入を完全に防ぎます。
- 防風性: 稜線などで吹く強い風を遮断し、風による体温低下を防ぎます。
- 透湿性: 体から発せられる汗(水蒸気)をウェアの外に放出し、内側からの濡れ(汗冷え)を防ぎます。
このように、レインウェアは「防水」「防風」「透湿」という3つの機能を組み合わせることで、外的要因(雨・風)と内的要因(汗)の両方から体を守り、安全を確保するための重要な装備なのです。
言ってしまえば、単なる雨具ではなく「命を守るためのシェルター」と捉えることができます。
なぜビニールカッパでは代用できないのか

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登山の装備費用を抑えるために、コンビニやホームセンターで安価に手に入るビニールカッパで代用しようと考える方もいるかもしれません。
しかし、これは非常に危険な選択です。
ビニールカッパは、外からの雨を防ぐ「防水性」は非常に高いものの、内側からの湿気を逃がす「透湿性」が全くありません。
登山は想像以上に汗をかく活動であり、透湿性のないウェアを着て行動すると、自分の汗で内側がびしょ濡れになってしまいます。
この状態は、雨に濡れることと同じ、あるいはそれ以上に危険です。
濡れた衣服は乾いた状態の約25倍もの速さで体温を奪うと言われており、汗冷えによる低体温症のリスクを急激に高めます。
以下の表で、登山用レインウェアとビニールカッパの機能性を比較します。
機能 | 登山用レインウェア | ビニールカッパ |
防水性 | 高い | 非常に高い |
透湿性 | 高い(蒸れにくい) | ゼロ(非常に蒸れる) |
防風性 | 高い | 高い |
耐久性 | 高い | 低い(枝などに弱く破れやすい) |
快適性 | 動きやすく快適 | 動きにくく不快 |
このように、登山においては「防水性」と「透湿性」の両立が不可欠です。
ビニールカッパは登山の環境に適しておらず、安全のためにも必ず専用のレインウェアを使用してください。
忘れがちなレインパンツは必要?

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レインウェアというとジャケットに意識が向きがちですが、パンツも同様に重要な装備です。
雨が降れば、上半身だけでなく下半身も当然濡れます。
濡れたズボンは足の動きを妨げるだけでなく、足元から体温を奪っていくため、全身の冷えにつながります。
特に、登山道では草木についた露や雨水がズボンに付着しやすく、気づいたときには下半身がびしょ濡れになっていることも少なくありません。
また、ぬかるんだ道を歩く際の泥はねを防ぐ役割も果たします。
登山用のレインパンツを選ぶ際は、靴を履いたままでもスムーズに着脱できるサイドジップ付きのモデルが非常に便利です。
急な天候の変化に対応するため、ザックから出してすぐに履ける仕様かどうかは、快適性を大きく左右するポイントとなります。
したがって、レインウェアは必ず上下セットで準備し、どちらか一方を省略することは避けるべきです。
全身を雨や風から守ることが、安全な登山の基本と考えましょう。
便利な防寒着として兼用できる一着

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レインウェアは雨天時だけでなく、晴れた日の防寒着としても非常に優れた性能を発揮します。
その鍵となるのが、高い「防風性」です。
例えば、森林限界を超えた稜線では、たとえ晴れていても強い風が吹きつけていることがよくあります。
風速が1m/s増すごとに体感温度は約1℃下がると言われており、風にさらされ続けると急速に体温が奪われていきます。
このような状況でレインウェアを一枚羽織るだけで、風を完全にシャットアウトし、体感温度の低下を効果的に防ぐことが可能です。
また、長時間の休憩中や、早朝・夕方の冷え込む時間帯にも活躍します。
行動中は暑くても、立ち止まると汗が冷えて一気に寒さを感じることがあります。
この時にレインウェアを着ることで、体温の過度な放出を防ぎ、体を冷えから守ります。
このように、レインウェアは「雨具」と「ウィンドブレーカー(防寒着)」の二役をこなす万能ウェアです。
荷物を少しでも減らしたい登山において、一つの装備が複数の役割を担えることは大きなメリットと言えます。
「登山でレインウェアはいらない」を卒業する選び方
- 汗冷えを防ぐ「透湿性」の重要性
- 持ち運びやすいコンパクトなモデル
- 性能を維持するメンテナンス方法
- 初心者にもおすすめのレインウェア
- 総括:登山でレインウェアはいらないは危険
汗冷えを防ぐ「透湿性」の重要性

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レインウェアの性能を語る上で、「防水性」と並んで極めて大切なのが「透湿性」です。
透湿性とは、ウェア内部の汗による水蒸気を、生地を通して外に放出する能力のことを指します。
登山中は、季節を問わず大量の汗をかきます。
この汗が水蒸気としてスムーズに排出されないと、ウェアの内側で結露し、結果として肌着や中間着を濡らしてしまいます。
これが「汗冷え」の主な原因です。
前述の通り、濡れた衣服は体温を急激に奪うため、透湿性の低いレインウェアは、低体温症のリスクを高める要因となり得ます。
・透湿性の目安
透湿性は「g/m²/24h」という単位で示され、生地1平方メートルあたり24時間で何グラムの水分を透過できるかを表します。
一般的な登山活動であれば、最低でも10,000g/m²/24h以上の性能を持つモデルを選ぶのが望ましいとされます。
ハードな活動を想定する場合は、20,000g/m²/24h以上の高い数値を持つ製品が快適です。
ゴアテックスに代表される高機能な防水透湿性素材は、この性能に優れています。
いくら外からの雨を防いでも、内側からの汗で濡れてしまっては意味がありません。
快適で安全な登山のためには、透湿性の高さを第一に考えてレインウェアを選ぶことが鍵となります。
持ち運びやすいコンパクトなモデル

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レインウェアは、雨が降っていない限りザックの中に収納しておく装備です。
そのため、軽量でコンパクトに収納できることは、製品を選ぶ上で非常に重要な要素となります。
軽量なモデルは、登りでの体力の消耗を抑え、ザック内のスペースにも余裕を生むため、パッキング全体の負担を軽減してくれます。
最近の製品は、高い機能性を持ちながらも、ジャケット単体で200g~300g台、上下セットでも500g程度と非常に軽量化が進んでいます。
多くのモデルには専用の収納袋(スタッフバッグ)が付属しており、これを使えば驚くほど小さくまとめることが可能です。
中には、ポケット自体が収納袋になる「パッカブル仕様」の製品もあり、さらに手軽に携行できます。
ただし、注意点もあります。
一般的に、極端な軽量化を追求したモデルは、生地が薄くなるため、厚手の生地のモデルに比べて耐久性が劣る傾向があります。
岩場での擦れや木の枝への引っかかりが想定されるようなハードな登山スタイルを好む場合は、軽さだけでなく、生地の強度とのバランスを考慮して選ぶことが大切です。
性能を維持するメンテナンス方法

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高価な登山用レインウェアも、手入れを怠るとその性能は著しく低下します。
特に、防水透湿性素材の機能を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
レインウェアの表面には、水を玉のように弾くための撥水加工が施されています。
しかし、使用するうちに泥や皮脂、汗などの汚れが付着すると、撥水性が低下し、生地が水を含んでしまいます。
生地表面が濡れると、透湿性の機能が妨げられ、内側が蒸れやすくなるのです。
性能を長持ちさせるためには、使用後に洗濯することが基本です。
・基本的な洗濯とケア
- 洗濯
製品の洗濯表示を確認し、家庭用の液体洗剤を使って洗濯機で洗います。
粉末洗剤は溶け残りが性能低下の原因になることがあるため、避けるのが無難です。
すすぎは、洗剤が残らないように通常より多い2回以上行うと良いでしょう。 - 乾燥
洗濯後は、風通しの良い日陰で吊るして完全に乾かします。 - 撥水性の回復
撥水性が落ちてきたと感じたら、乾燥後に当て布をして低温でアイロンをかけるか、乾燥機で軽く熱を加えることで、ある程度回復させることが可能です。
それでも水を弾かなくなった場合は、市販の撥水剤を使用してケアします。
適切なメンテナンスを行うことで、レインウェアは長く快適に使用できます。
面倒がらずに、登山後の習慣として取り入れることをお勧めします。
初心者にもおすすめのレインウェア

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これから登山を始める方が最初の一着を選ぶ際、数多くの選択肢の中から最適なものを見つけるのは簡単ではありません。
ここでは、どのような基準で選ぶべきかという基本を押さえつつ、具体的な製品を価格帯や特徴別に紹介します。
登山スタイルや予算に応じて、自分に合った一着を見つけましょう。
信頼性と機能性で選ぶ定番モデル
長時間の山行や天候の変わりやすい高山への挑戦も視野に入れるなら、やはり信頼のおけるアウトドア専門メーカーの定番モデルがおすすめです。
長年の技術蓄積に裏打ちされた品質と機能性、そして充実したアフターサービスは、大きな安心感につながります。
-
モンベル ストームクルーザー ジャケット&パンツ
日本を代表するアウトドアブランド、モンベルの看板商品です。
防水透湿性素材の最高峰である「ゴアテックス®ファブリクス」を採用し、軽量性と耐久性のバランスに優れています。
細部にまでこだわったカッティングや機能性(止水ジッパー、フードの調整機能など)は、あらゆる状況で快適な着心地を提供します。
まさに「迷ったらこれ」と言える、信頼性の高い一着です。リンクリンク -
ミズノ ベルグテックEXストームセイバーVIレインスーツ
上下セットで販売されており、コストパフォーマンスに非常に優れたモデルです。
ミズノ独自の防水透湿素材「ベルグテックEX」は、耐水圧約30,000mm以上という高い防水性を誇ります。
登山専門メーカーの製品に引けを取らない性能を持ちながら、比較的手に入れやすい価格帯であるため、初心者の方が最初に揃える一着として大変人気があります。リンク
コストパフォーマンスで選ぶ注目のモデル
「まずは日帰りの低山から気軽に始めたい」「初期費用はできるだけ抑えたい」という方には、近年著しい進化を遂げている高機能かつ安価な製品も有力な選択肢となります。
- ワークマン イナレムストレッチレインスーツ
作業着のイメージが強かったワークマンですが、現在ではアウトドア愛好家からも高い評価を得ています。中でも「イナレム」シリーズは、耐水圧20,000mm、透湿性25,000g/m²/24hという、専門メーカーのミドルクラス製品に匹敵する高いスペックを誇ります。
ストレッチ性も備えており、動きやすいのも特徴です。
驚くほど手頃な価格でこの性能が手に入るため、登山入門用としては十分すぎるほどの機能性を持っていると言えます。
失敗しないための最終チェックポイント
どの価格帯の製品を選ぶにしても、安全に関わる装備であることに変わりはありません。
以下の基本性能は必ず確認しましょう。
- 耐水圧: 最低でも10,000mm以上。激しい雨にも耐えるには20,000mm以上が理想です。
- 透湿性: 最低でも10,000g/m²/24h以上。快適性を重視するなら、より高い数値のものがおすすめです。
- 形状: 上下セパレートタイプを選びます。ポンチョは風に弱く足元が濡れやすいため、本格的な登山には不向きです。
これらの基準を満たしているかを確認した上で、最終的には必ず店舗で試着することを強く推奨します。
同じサイズ表記でもメーカーやモデルによってフィット感は大きく異なります。
フードを被ったときの視界の広さや、腕を上げたときの突っ張り感、パンツの丈などを実際に確かめ、自分の体に合った一着を選ぶことが、後悔しないための最も重要なステップです。
総括:登山でレインウェアはいらないは危険
この記事で解説した内容の要点を以下にまとめます。安全で快適な登山のために、ぜひ参考にしてください。
- 登山でレインウェアはいらないという考えは非常に危険
- レインウェアの最も重要な役割は体温低下の防止
- 防水、防風、透湿の3つの機能が安全を確保する
- 山の天気は急変するため晴天予報でも必ず携行する
- 遭難やビバークなど不測の事態への備えとなる
- ビニールカッパは透湿性がなく汗冷えのリスクが高い
- レインパンツもジャケットと上下セットで必須の装備
- 防風性が高く休憩時などの防寒着としても兼用できる
- 透湿性はウェア内の蒸れを防ぎ快適性を保つ鍵
- 汗冷えは低体温症の大きな原因であり注意が必要
- 持ち運びの負担を減らすコンパクト性も選択の基準
- 軽量モデルは耐久性とのバランスを考慮して選ぶ
- 定期的な洗濯とメンテナンスが性能を長く維持させる
- 汚れは撥水性と透湿性を低下させる原因となる
- 信頼できるアウトドアメーカーの製品を選ぶのが安心
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